Loveletters from UltimaThule

極北からの本と映画の備忘録

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眠ろう、と囁く声がしたので、そっと抱き寄せて愛撫する。あたたかくやわらかくちいさくてすべすべして心地よい、でもそのなにかの名前がわからずに、静かに触れつづける。名付けたくて知りたくて。指先につたわってくるかすかな鼓動。とても懐かしい匂いがゆるやかにたちのぼって全身が包まれていく。いつしか呼吸が深くなっていき、全身の力が抜けていくのがわかる。眠ろう。声が耳元で繰り返す。そっと目を閉じる。世界が消える。うん、眠ろう。おやすみなさい